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真夏のマウンドより、
沸かしすぎたお風呂より、
生暖かい空気が、室内を支配している。肌にべっとりと絡みつくようなこの空気が、嫌いではない。
疲れた身体がまどろんでいくのに抵抗して意識をとどめた山本は、ふう、と息を吐いた。
何もまとわない身体が、熱い。絡みついてくる空気のかたまりを振り払うように、前髪をかきあげる。手のひらに汗の玉が付着して、室内の温度が1度、上がったような気がした。
シャワー浴びなきゃ、と立ちあがりかけたとき、隣でこれまた全身を露出させたままの身体がぴくりと身じろいだ。汗ばんだ腕と腕が触れて、思わずどきりとする。
一瞬にして蘇ってきた少し前の映像を振り払うようにして小さく首を振ると、山本は伸ばされた手を取って指を絡めた。
「寒い?」
尋ねると、いつもと何ら変わらない調子で「ぜんぜん」と返される。それじゃあなんでくっついてきたんだろ、と頬を掻いてみると、繋いだ手のひらをにぎりこめられた。
ちりっと、触れた部分が灼ける。
「……ヒバリ?」
「いいから、じっとしてなよ」
それなのに、離れたくない。
それは、ずいぶんと心地よい熱さだ。
「…ん」
違う、と思いながら、山本は手をにぎり返した。
声の調子は淡々としていていつもと何ら変わりなく思えるのに、本当はぜんぜん違うのだと最近ようやくわかるようになってきた。
普段の、自分至上主義のヒバリ。情事中に余裕のない様子で荒い息を吐きだすヒバリ。情事後、疲れのせいかいつもよりも幼く甘えてくるヒバリ。ぜんぜん違う。なのにみんないっしょだ。
触れあう体温があつく、いとおしい。
そんなことを考えていたら、隣からすーすーと静かな寝息が聞こえてきて、山本は目をしばたかせた。あっという間に眠ってしまった。学年末が近くて風紀委員の仕事も忙しいようだから、疲れているのだろう。
不謹慎だとは思うのだけれど、こんな風に無防備な姿をさらしてくれるのが、すごくうれしい。しあわせだ、と思ったら、なぜか急に恥ずかしくなった。
「…ヒバリ」
応える声はなく、黒くやわらかい髪がかすかに動いて、腹のあたりをくすぐった。
急激な眠気が、襲ってくる。
(あつい、な)
これから、季節は温暖を増してくる。
これ以上あつくなったら気を失ってしまいそうだな、なんてとりとめのないことを考えながら、山本はゆっくりと目を閉じた。
もうすぐ、春がやってくる。
/07.03
甘く甘く甘く…意識すればするほど空回り☆←
イメージカラーは乳白