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助けられなかった。
助けることを許されなかった。
この肩を滑りぬけた灰色の長い髪の残像が、
焼き付けられたように目蓋の裏に残っている。
空は相変わらず、腹が立つほどに青い。
俺は屋上で、まどろむようにして藍を見上げていた。
「……いー天気ー」
呟く声が、どこにもはねかえらないまますぅっと消えていく。
まるで空に吸い取られてしまったようで、たまらなく悲しくなった。
返して、とすがるように、深い青に手を伸ばす。
その手さえも透けて、赤い血潮を俺の視界に映し出した。
さっきまで見ていた青とのコントラストが、激しい。
ちかちかする目を瞑ることが、恐ろしくてならなかった。
甦る、残像が。
まぶたの裏に焼きついた、刻印が。
攻め立てるように俺に襲いかかって、呼吸さえも奪って渇く。
「…………っ」
息をつめて、俺はこぶしを握った。
嫌な汗が、額を伝って落ちる。
そっとまぶたを開けるとそこには朱はなくて、最初のように青の支配する世界が広がった。
吸いこまれる、すべてが。
わけもわからず、それでもあがきつづける、幼い気持ちが。
不変を渇望して、変わることに絶望する、幼すぎる感情が。
返して、と、叫ぶ。
「……く、ぅ……っ」
喉の奥に硬いものがつっかえて、形にならないおえつが漏れた。
ぐるぐると渦巻く、感情。
正しい形も知らない。知れない。知りたくもない。
どんどんと沈んでいく何かといっしょに、俺もこのまま屋上の床になるんじゃないだろうかと思った。
いっそそんな風になれたらいい。
何も知らない顔をして、本当は何もかも知っていて、だけど形を変えないでいられるなんて、ずるい。
それはとても卑怯で、ずるくて、うらやましくて、大嫌いだ。
不意に、灰色の雲が空を覆って、うるさい青が犯された。
雨が降ればいい、と、くちびるを噛むようにして、願った。
/07.01
武独白。
これでもスク山だと言い張ってみる。