22センチのスキマ。
ずっと変わらずにいられたらいいと思う。
だけど、ね。たまに、ほんの少しだけ。
何か物足りなく感じたり、しちゃうんだ。
平和で、何にもない日々。
特に記憶に残らないような日々が嵐のように流れて、それでもやってくる明日に、時に憂鬱になりながらも満ち足りた充実感を覚えていた。
となりを向けば2人の親友がいて、変わらない笑顔をくれる。
そんな何でもない日々が、この上なくしあわせだった。
(マフィアとか、そんなしがらみがなかったらなぁ)
今日この日を、もっとしあわせだと思えるのに、と感じつつ、でもそれがなければ今の自分もいなかったのだと考えると、なんとも複雑な心境になった。
可とも、不可ともいいがたい。
(……だけど、まぁ、)
今がしあわせならいいか、とも思う。もともと物事を不覚まで考えないタチなのだ。その未来が暗い道に続いているならなおさら、知りたいとは思わない。
気付かないうちになんとなく流されることを願う自分を、時に卑怯だとは思うけれど。
それでも今はただ、目の前にあるしあわせだけを見つめていられたら楽だから。選択は、もう少しだけ、待って欲しい。
「――十代目!」
突然後ろから声をかけられて、文字通りツナは飛び上がった。
考えごとをしているときに突然出現するものだから、驚く。何の前触れもなくどこからともなく現れるのが、最近の彼の特性だ。
獄寺はいつものように白い歯を見せてニカッと笑うと、嬉しそうに首を傾けた。
「どうしたの?獄寺くん」
「ちょっとその辺をぶらぶら歩いてたら、十代目らしき背中が見えたんで。思わず走ってきちゃいました!」
心なしか息が乱れている様子からすると、結構な距離を走ってきたのか。思って顔を上げると、逆光が邪魔して獄寺の表情は窺えなかった。
けれど、悪い気はしない。こんな風に、自分を見つけて、手を振って挨拶をしてくれる人がいるのも。
なんだかくすぐったくなって、ツナはかすかに身じろぎした。
「ご一緒しても、いいですか?」
「………うん」
しあわせだよ。今が、すごくしあわせ。
こんな風にのどかな日々が、ずっと続けばいいと思う。
でも。
でも、ね。
(ちょっとだけ、何か足りない。)
/07.01
初めての獄ツナ…
獄ツナは普通に好きです。ラブラブでもなんでも。