エンドオブサマー!
みんみんみん、じりじりじり。
耳につく蝉の大合唱が、涼しい部屋を出た途端に飛び込んでくる。襲い掛かってくる熱気に、一瞬で絡めとられた。
「ぐわー。あっちー」
「…言うな。余計暑くなんだろ」
だらしなくTシャツの首元を伸ばして生ぬるい風を送り込みながら言う男に非難を浴びせて、扉を閉める。かちっとオートロックのかかる音を確認して、歩き出した。
「早くいこーぜコンビニ。こんなあちーととけちまう」
舌を出して眉間に皺を寄せる山本に、舌出して熱を逃がすのは犬のすることだ、とつっこむのも面倒くさくて、獄寺は無言のまますたすたと足を進めた。後ろから山本が、あちーあちーとけるーとか何とか性懲りもなく呟きながら、パタパタと鉄筋のコンクリートにサンダルの音を響かせながらついてくる。
質素なTシャツにハーフパンツ、ビーチサンダルと、いかにも季節柄を反映した服装でやってきた山本に、獄寺この暑いのによく上着なんか着てられるよなーと言われて、何も言い返せずにこんがりと焼けたむき出しの二の腕を殴った。人ん家の冷蔵庫を我が物顔で覗き込んだ山本が、げー何もねーお前普段どうやって生活してんの、あ、そだ、アイス買いにいかね?と詰め寄ってきて、なんだかんだで押しに弱い獄寺が渋々了承して外に出ることになったときにも、彼は、外まじで暑いぜー上着脱いだら?なんて言ってくるものだから、とうとう鬱陶しくなって口を塞いだ。鼻にかかった声を聞いたら余計あつくなったものだから、慌てて体温から離れて部屋のドアを開けた。
外から進入してきた風を心地よいと感じたのは、ほんの一瞬だけだったけれど。
「何がいーかなー。やっぱ暑い夏にはガリガリくん?」
「…………」
「あー、でも久しぶりにカキ氷のヤツも食べたいなー」
「…………」
「なー、獄寺はまたいつもの高いヤツ買うの?でもあれ、旨いけどノド乾かねー?」
「…………」
うるさいくらいに降り注ぐ太陽の光が、小麦色の肌に反射する。眩しい光を避けるように日陰を探して辿りながら一歩一歩と歩みを進める獄寺の方に触れて、山本は思いついたように顔をほころばせた。
「獄寺、いーこと思いついた!」
「…あ?」
「パピコ!パピコ半分コにしよーぜ」
シロモモ?味とか言うのこないだ見かけたんだけどさー、挑戦してみねー?楽しそうにのたまう男に、そりゃハクトウってーんだ大バカ。つーかお前いつも半分じゃ足りねーとか言ってんじゃねーか。んでまた、追加分買いにコンビニまで歩く気かよ、この炎天下ん中。出かけた言葉を飲み込んで、一言、うるせえと漏らした。
暑かった夏も、もうじき終わる。
どうか、願わくば、
(すごしたトキが泡になりませんように、)
/07.08
(まめこが)夏の終わりを嘆くSS
なんかいろんな妄想が入り混じってますが、とにかく夏休み中山本は獄寺のマンションに入り浸ってればいい