――たけし、
「……ん、」
誰かに呼ばれたような気がして目を開けたら、飛び込んできたのは真っ白な天井、それから懐かしい面影だった。つい最近にも顔を合わせてるんだ、懐かしいことなんて何もないはずなのに、ぎゅっと心臓の辺りが痛くなって、ベッドサイドにあった手のひらを思わず、握り締めた。
「起きたの」
うん、と首肯を返す。感じていた不安に反して、その手は振り払われることなくその場にとどまってくれた。そう、と然して興味なさげに返された言葉、だけどどこか違和感があって少し高い位置にある顔を見上げ続けてみれば、ゆっくりとその切れ長な目がおれに向いて、わずかに首をかしげた。
「……なに」
見知った顔のはずなのにどうしてこんなに違和感を感じるのか、むしろおれが問いたい。んんん、と眉間に皺を寄せて首をかしげると、びきっと引きつったような痛みが全身に伝染して、ああそうかおれ怪我してたんだっけ、と思い出すに至った。いっ、と生理的な声を上げたらわずかにヒバリが眉間に皺を寄せたようだったけれど、今はこの違和感の正体を突き止めることのほうがおれにとっては大事だ(ヒバリの中での優先度は知らないけど)。
「だから、なんなの」
そのまま何も言わずにただ顔を見つめてくるおれに焦れてきたのか、少し怒ったような声を出して、邪魔そうに右手で髪を払って(おれが握っているのは、左手)こちらを向いた。改めて目が合うのと同時に、あ、と心当たる。
「そっか、髪、だ!」
「………は?」
一瞬面食らったように動きを止めて(あ、これって結構貴重かも)、でも次の瞬間にはたいそう呆れた、という風に目を眇められた。これは、おれとしてはまったく心外だ。
「だから、髪!なんかヒバリいつもと雰囲気ちげーなーと思ったら、髪形が違うのな!ホラ、前髪、短くなってる!」
「…………」
「なに、いつ切ったの?いめちぇん、ってヤツか?…でもそれ、ハハ、ちょっとおもしれー」
呆れられた仕返し、とばかりに少しオーバーに笑って見せれば、まとっていた空気が一瞬で色を変えた。あ、これはまずい、しくじった、気づいたときにはいつだってもう手遅れだ。
ちょっとまって今の冗談だから落ち着けよヒバリ――弁解する余儀もなく、ぎゅっと握り返された右の手のひらに刻まれていた傷が、ひりっと痛んだ。痛みに目を閉じて、開けばその瞬間には。
「キミの顔がよーく見えるようにね」
滅多に拝めない(頼まれたって拝みたくもない)満面の笑みが、おれの視界を埋め尽くしていた。
/07.08
あれ?なんでおれたちこんな体勢?
それはね、きみをおいしくいただくためだよ。
赤ず●んへの冒涜とかヒバリさんが嫌いとかそういうんじゃないんです、はい。
最後のセリフをヒバリさんに言ってほしかった!それだけ!←