まだまだ子供ねときみは笑った
かちゃり、音を立てて水谷が小皿の上に銀のスプーンを置いた。その上に座するティーカップの中には、注文したホットコーヒーに角砂糖を2つ投下した液体が入っている。ミルクしか入っていないはずの自分のコーヒーがやけに甘ったるく感じて、おれはカップを置いた。
苦いのダメならコーヒー頼むのやめなよ、いつかした助言は、だってさかえぐちがコーヒーなのにおれだけココア頼むとか恥ずかしいじゃんかー!と、それこそ恥ずかしいこと極まりない台詞によって却下された。別にココアを頼むのは恥ずかしいことでもなんでもないと思うけど、仕方なくたしなめながら言ったら、わかってないよなあさかえぐちは、なんて胸を張られたからなんとなく腹が立ってテーブルの下の足を思いっきり踏みつけてやった。そしたら水谷はふぎ、と変な声を上げて青くなって客の目をこれでもかってほどに引き付けやがったから、慌てて口に指当ててしー!っと小声で怒鳴ってやったら、なんかよくわかんないけど今度は赤くなって黙り込んだ。
そのころはたしか、コーヒーに投下されていたのはミルク2つに角砂糖4つだった。もはやコーヒーの原型をとどめていない。水谷のつくる黒くて甘い液体はもう見慣れたといえば見慣れたけど、改めて考えるとやっぱり、気持ちが悪い。
思い出してなんだかおかしくなって、ふふっと笑ったら、水谷がどしたの?と首をかしげた。
「んーん、なんでもない。……コーヒー、おいしい?」
「あまい」
だろうね。
底にたまった砂糖を溶かすようにもう一度くるくるとスプーンを動かしだした水谷を見ながら、おれは少し苦めのコーヒーを嚥下する。
今度来るときには、ココアでも頼んでみようか。
マーブルの誘惑
(感化されてるのは、どっち)
/07.11
さすがにこの砂糖の量はない
文貴か勇人どっちかがすっげ甘党だと萌える
ココアのおいしい季節ですね^^