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:: キミに出逢ってから、すっかりそれがすべてになってしまったんだ
::
あぁ、雨だ。
もやもやと霧がかった頭の中で、無意識に判断した。
こんな日は、たいてい気分が優れない。
曇天を見上げたところでとうてい清々しい気持ちにはなれないし、
大好きなテニスを芝生のコートで思いっきりプレイすることも出来ない。
こんな日ばかりが続く6月は、オレが一年の中で最も嫌いな月だ。
だからといって、いつまでもダラダラと布団の中にいるわけにはいかない。
一度生活のリズムを崩してしまうと元に戻すのはなかなか大変だし、
このまま寝続けたら確実に遅刻だ。
経験上、2度寝をしてしまったら、
再び目を覚ました頃には8時を回っているだろう事は安易に予想がつく。
「……………」
重い身体に鞭を打って、オレはのっそりと布団を出た。
相変わらず耳障りな音は消えないが、雨の朝の温度というものは嫌いではない。
暑すぎず、寒すぎもしない。
ただひとつだけ難を言うならば、少し空気が湿っぽいが。
大きなあくびを漏らしながら階下へ降りると、
母親がこれまた眠そうに「おはよう」と声をかけてきた。
軽く「おう」と声を返して、既にテーブルの上に用意された朝食の前へ腰掛ける。
まだ正常に働きだしていない舌で懸命にトーストを味わいながら咀嚼する端で、
全神経を集中させるようにして聞いているのは、外の、雨音。
しとしとしと。しとしとしと。
さぁさぁさぁ。さぁさぁさぁ。
止まない雨音は、それでも強さが変化しているのか、波のある音を響かせる。
しつこく襲い掛かってくる睡魔に視覚を奪われながらも、トーストを口から離さないまま、
耳の神経だけを研ぎ澄まして。
ぱしゃん。
この音を、待っていた。
オレは急いでテニスラケットと数個のボールだけが無造作に詰め込まれたキャリアケースと、
全く空にも等しい、言ってしまえば飾りと化しているスクールバックをまとめて肩から提げると、
口の中に残っていたトーストを、テーブルの端に置いてあったミルクで流し込んだ。
それから慌てて靴に足を通して、焦っていたことがばれないように、
息を整えながらゆっくりと靴紐を結ぶ。
それからふっと、自嘲気味の笑みを零した。
「おはようございます、宍戸さん」
ドアを開けたと同時に耳に飛ぶ込むその声で。
憂鬱な気分を一瞬で吹き飛ばしてしまうオレは、相当単純らしい。
/06.11
宍戸さんだってちょたが大好きなんだもの。
短い割に気に入ってた覚えがあります。