てのひら
2月下旬の空気は、肌を刺す。
日はもう長くなってきたと言うのに、まだまだ寒さは厳しいまま。
吐き出す息が白く染まって、一瞬ののちに消えた。
「さみーな」
そんな風に、思ってたことと同じことを言われて。
へへ、今、同じ感情を共用してたんだよねなんてそんな、恥ずかしすぎる喜び。
鼻先が赤く染まる。
夕日と、寒さのせい。
「…なぁ、」
新たに吐き出された息が、白く凝結する。
きれい、だなぁ。
「ツナ」
寒くてポケットに逃げ込んだ手のひらが、汗を握る。
厚くなんかないのに、なんで。
なんで、こんなに熱いのかな。
「うん」
短い言葉のやり取りが。
まるでその度に立ち上る白い蒸気を楽しむように、とりとめもなく交わされる。
歩幅が、比例する。
「さむい、ね」
もう何度も交わした声。
言ったところで何も変わりはしないのに、バカみたい、何を言ったらいいのかわからないなんて。
「じゃあ、手、つなぐ?」
空模様について語るように、なんの意図もなく。
繰り出された声にどきりとして。
沈みかけた夕日が、ああ、赤く眩しい。
「うん」
ポケットに入れていたおかげで温かい手のひらどうしが、触れる。
しなやかなようで、でもやっぱりこどものような体温のある手のひらが、確かに今、俺の手の中にあって。
バットを振って出来たんだろうマメが、存在を誇張する。
「あったかいね」
「ん」
大きな手のひらを確かに包み込んで、
この先もずっと、変わらずにあるようにと願った。
もう少したったら、いつか手の大きさも、
負けないくらいに追いつけるかな。
/07.02
ツナ山に癒され隊!
黒ツナ山も好きだけど、白ツナ山推奨。