糖蜜のパルフェさながら
ほろりほろりと流れ落ちるそのきらきらした粒が好きなんだ、伝えたらもう、泣いてくれなくなってしまうかな。
それとももっと、涙を流してくれるかな。
「やまもと」
呼びかけても顔も上げず、いやいやと小さな子どもがだだをこねるように首を振る少年は自分よりもはるかに大きくて、普通だったらかわいいだなんて到底思えないだろうに、それがもう抱き締めてしまいたくなるほど愛らしく見えるのだから惚れた弱みも恐ろしいと思う。
大きな瞳は伏せられて、時折ひくっと喉を震わせて息を吸い込む音が聞こえる。声を押し殺すように下を向いてすすり泣く姿は、ああなんて扇情的なんだろう!
かすかに洟をすする音が聞こえて、ひゅっと気管を空気が通過する音がした。惹かれるように手を持ち上げ、濡れた頬に触れる。冷たい冷たい冷たい。ああこれはおれが生んだ冷気なのだ。いつもはすべてを包み込むようにあたたかい彼の、こんな冷たさを引き出すのは紛れもなくおれなのだ。
ぞくぞくぞくと背筋を振るわせる感情。ああもうどうしてこれほどに愛おしいのか。
「やまもと、」
もう一度呼びかければ、涙にかすれた声で「ツ、ナ、」と返る。目は伏せられたまま、撫でるように頬を降りてゆるく閉じられたくちびるに触れれば、ひどく乾いたそれにうるおいが加わった。なぞるように動かしてくちびるの上に広がる塩分を含んだ液体が、艶やかに電灯の灯りを跳ね返して光る。情事のあとを思わせる濡れたくちびるが小さく開閉して、彼の喉はもう一度おれの名を奏でた。
「つな、」
音もなく親指がすんなりと侵入を果たす。自らの涙で濡れた指を舐めて、吸って、鼻から息を吐き出しながら懸命に、舌を絡みつかせる。背筋を駆け上がる快感、それはたしかに彼がおれに与え、おれが彼に与えているものなのだ。やがてちゅぷりと音を立てて開放された親指は、ゆっくりと再びくちびるの上を滑った。途中、乾燥で割れた皮膚に爪を引っ掛けると、薄い皮に傷がついてじわりと朱が滲み出した。反射的に肩を揺らした少年に、おれの唾液を送り込む。傷つけた皮膚を執拗に舐め続ければ、わずかに鉄の味が口の中に流れ込んできた。くちびるを離して、唾液に濡れた指であやすように頬を撫ぜる。
「ごめんね、痛かったね、」
(だけどもっと見ていたいんだ、流れ出てくるそのきらきらの粒、を)
濡れていないほうの手でふわ、頭を撫でると、少年はまたひとつ、瞳から透明の液体を零した。形のいい頬を伝って、くちびるに降りて口内に侵入する。唾液と混ざって、もうそれはなんだったのかわからなくなった。
次々と零れ落ちてくるそれを舌で受け止めればとても甘美。ああそれはいつも、おれの身体中の血を滾らせて止まないのだ!
糖蜜のパルフェさながら
(ぼくをよわす あまい媚薬、)
/07.10
私は根本的にツナのキャラを取り違えている
黒ツナが好きなわけじゃないんです、病んだ関係が好きなんです
ツナも山本もお互いに依存しまくってればいいな